─ 抜 粋 ─
旧齋藤家夏の別邸は、新潟の三大財閥の一人斎藤喜十郎氏が大正7(1918)年に別荘として建築したもの。これに付随した庭園は、大正6〜9(1920)年にかけて築造されました。庭園は約1000坪、もともとの自然地形を利用した池泉回遊式庭園で、作者は東京根岸の松本幾次郎氏と言われているが弟亀吉の説もあります。
近年、この邸宅の売却が報じられ、市民有志で「旧齋藤家夏の別邸の保存を願う市民の会」が組織され、2007年9月には保存の請願書が新潟市に提出された。その間、一般公開も行われて市民の大きな反響を呼びました。
これを受けて、市では2008年12月市議会で請願採択、2009年7月に取得が決定。「旧齋藤家夏の別邸の保存を願う市民の会」は初期の目的を達成したとのことから8月に解散し、新たに「旧齋藤家別邸の会」を設立、市側と保全管理や利活用などについて協力支援を行うこととなりました。
市では「旧齋藤家別邸活用等検討委員会」を設立して、管理・運営や利活用のあり方などについて10月から議論を開始しています。
このように「旧斎藤家夏の別邸庭園」は、個人所有の庭園が市民運動により市の所有となり、《個》の庭から《公》の庭として生まれ変わろうとしており、今後、保全や利活用に関する調査・検討が行われる予定です。
このとき、“庭園の文化財的価値とは”といった従来型の議論だけが展開されて、心から庭園を楽しもうとする人が傍らに追いやられてしまうことが懸念されます。そこで、庭園が現代社会の中で本質(原論)を失わずに継承されていくために、①市民の財産としてどのように位置づけるか、②まちづくりの中でどのように活かすか、という点について問題提起を行い、庭園と我々人間との本当の関係とは何か、それを結ぶ手段としての庭園の再発見などについて考えてみたいと思います。